【第5幕:大坂夏の陣、片倉隊の「凄まじき盾」真田幸村の託宣】
それから15年。慶長20年(1615年)5月、時代は戦国最後の激突、「大坂夏の陣」を迎えていた。 徳川方の主力・東軍の一翼として、大坂城へと猛進する伊達の漆黒の軍勢。その最前線、片倉小十郎重長の部隊のなかに、髪に白いものが混じった「寺尾善右之門」の姿があった。
秀吉の理不尽な裁定によって領地を失い、家名まで奪われて「死人」として生きることを強いたこの狂った戦国の世。そのすべてに対する怒りと、敷玉・宮沢の土地が育んだ不滅の執念が、ついにこの最終決戦の地で、攻防一体の「圧倒的な盾」として完全爆発する。
道明寺の激戦。崩れかかる前線を維持せんとする豊臣方の怒涛の進撃。善右之門は泥飛沫をあげて最前線へ躍り出ると、大盾を地面に叩きつけ、自らの肉体をその背後に固定した。名だたる大将首を討ち取る派手な金星など狙わない。彼の戦いは、敵の猛攻をミリ単位すら通さぬ「絶対防衛」であった。
豊臣方の前線部隊:「伊達の先鋒に、びくともせぬ不気味な盾がいるぞ! 押し潰せ! 突き崩せぇッ!」
襲いかかる槍の雨、浴びせられる刀刀の猛撃。しかし、善右之門は一歩も退かない。大盾が叩き割られれば、敵の槍を素手で掴んで引きはがし、自らの身体そのものを盾として敵の進路を塞ぐ。返り血と泥にまみれ、鬼気迫る形相で立ち塞がるその姿は、豊臣の精鋭たちに「この一線を越えることは不可能だ」という絶望を植え付けた。
善右之門(心のモノローグ):『俺は中目の盾……敷玉の水門を、宮沢の民を守り抜いた盾だ。ここですべてを押し返し、生きて大崎へ帰るんだッ!!!』
さらに翌日の最終決戦。家康の本陣目がけて決死の突撃を敢行する「真田の赤備え」の、死を恐れぬ狂気のごとき猛進。その凄まじい突撃力に対しても、善右之門は文字通り「動かざる山」として正面から立ち塞がった。真田の精鋭たちが放つ必殺の攻勢を、驚異的な執念だけで次々と叩き落とし、弾き返し、片倉隊の防衛線を完璧に死守してみせる。善右之門という一兵卒が築いた不落の壁は、伊達軍全体の決定的決戦の崩壊を防ぐ、まさに「偉大なる大盾」そのものであった。
だが、この激烈なる決戦のなかで、真田幸村の目を真に釘付けにしたのは、伊達軍の先鋒大将・片倉小十郎重長の圧倒的な武勇と、敵将をも唸らせるその凄じい器量の大きさであった。
「鬼の小十郎」と呼ばれ、白石の兵を率いて凄まじい突破力を見せる片倉重長。しかしその戦いぶりには、むやみな殺戮を嫌う、敵への深い敬意と武士の情けがあった。大激戦の末、自らの命が尽きることを悟った真田幸村は、激しく火花を散らした死闘のなかで確信する。 『伊達の片倉重長……あの男の凄まじい器量と義の心、そしてあの男の陣営にいる『絶対に崩れぬ盾』のごとき漢たちの強さがあるならば、敵ながら我が最愛の子どもたちを託すに足る。あの男たちなら、豊臣の不条理な炎から、我が血脈を間違いなく救い上げてくれる。』
歴史の通り、幸村はその片倉の「凄み」を信じ、落城の混沌のなか、命がけの密使を走らせて最愛の娘・阿梅(おうめ)、息子の大八(だいはち)ら、真田の忘れ形見たちを片倉隊へと秘密裏に引き渡したのだ。
片倉重長の手によって密かに陣営へと保護された真田の子女たち。しかし、彼らを護り抜き、無事に仙台・大崎の地へと連れ帰るためには、現場の兵たちの絶対的な沈黙と命懸けの隠蔽工作が必要不可欠であった。 徳川幕府に対する「国家最高レベルの反逆罪(大罪人の隠匿)」。もし露見すれば、伊達家も片倉家も間違いなく処刑・お家断絶となる一世一代の闇。
大坂の陣を片倉隊の「凄まじき盾」として守り抜き、満身創痍となりながらも生き抜いた善右之門は、保護された真田の子どもたちの姿を見て、不敵な笑みを浮かべて不退転の覚悟を決める。
善右之門:「……やりましょう。片倉様のあの凄じい覚悟に、我ら一兵卒も命を賭けてお応えするのみ。かつて我ら大崎中目は、秀吉によってすべてを奪われ、名前を捨てて生きてきました。今度はその秀吉の豊臣家のためにすべてを賭けた真田の血を、徳川の目から隠し通してみせます。大坂の戦場をすべて押し返したこの俺の執念を、今度はこの子たちの命を繋ぐ『目に見えぬ盾』にしてみせましょう。これぞ、我ら中目の不言実行の戦いです!」
彼らは真田の子女を密かに陣営へ匿い、戦後、仙台・大崎の領地へと連れ帰った。 幸村の息子・大八は「片倉久米之介」と偽名を名乗って幕府の目を欺き、善右之門もまた、すでに岩出山で政宗公から与えられていた「寺尾」の名のまま、何一つ不自然な足跡を残さずに完全に身を潜めた。そして、万が一にも幕府の家宅捜索が入った際に証拠が出ないよう、真田家との繋がりや伊達軍の関与を示す古い書物や記録を、涙をのんで全て処分(隠滅・焼却)した。
最初から名もない一兵卒「寺尾」として最強の盾となり、公式な記録に一切残らなかった善右之門だからこそ、幕府の警戒網を完璧にすり抜ける絶対の黒子(くろこ)となれたのだ。片倉重長という名将の凄じい器量と、すべてを跳ね返して「大崎へ帰る」と誓った善右之門の執念の盾。その二つが重なり合った徹底した沈黙こそが、真田の命を現代へと繋ぐ唯一の、確実に絶対の防壁となったのである。
「この物語のどこまでが真実で、どこからが虚構かは、読者の想像にお任せします。」

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