2026年6月19日金曜日

大崎合戦 第五章:地獄の深田と大崎の猛吹雪

 一方、手柄を焦る泉田重光率いる先陣の本隊は、天正16年2月2日、ようやく中新田城の手前を流れる成瀬川を渡り切った。だが、その眼前に広がっていたのは、見るも無惨な底なしの泥沼――「地獄の深田」であった。

中新田城の周囲は、足を踏入れば腰まで一瞬で埋まってしまうような、天然の要害たる低湿地帯。重い甲冑をまとった伊達の兵や軍馬は、泥に足をとられて身動きすらできず、陣を構えることすら不可能な大混乱に陥る。

そこへ、城代を任されていた大崎の重臣・南条隆信(なんじょうたかのぶ)の冷徹な防衛策が炸裂した。 「伊達の目を眩ませ、足に鎖をかけよ!」 南条の命により中新田の城下町に一斉に火が放たれ、激しい炎と黒煙が伊達軍の視界を完全に奪い去る。さらに追い打ちをかけるように、大崎の容赦なき大雪――「猛吹雪」が戦場を白く染め上げていった。

極寒の泥濘、視界を阻む煙、そして牙を剥く猛吹雪。戦う前にして凍え上がり、自分たちの身を守ることすらできなくなった泉田重光の軍勢は、総崩れとなって大敗を喫した。先陣としての矜持は泥に塗れ、彼らは命からがら、近くにある「新沼城」という小さな城へと逃げ込むしかなかったのである。


1章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_19.html

2章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_101.html

3章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_582.html

4章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_412.html

5章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_641.html

6章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_868.html

7章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_299.html

8章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_473.html

9章 https://occhi-room.blogspot.com/2026/06/blog-post_365.html

0 件のコメント:

コメントを投稿