2026年6月7日日曜日

『THE LAST BASIN:Honor of the Valley』【エピローグ:現代の大崎、受け継がれる不言実行の魂】

 


【エピローグ:現代の大崎、受け継がれる不言実行の魂】

画面は400年前の戦国の硝煙から、現代の大崎市・おじいちゃんのご葬儀 of の席へとオーバーラップする。 その場所は、400年前に善右之門が青生・彫堂の開墾を経て政宗公から取り戻し、一族がそのまま脈々と守り、今もあなたが生き続けている、他ならぬ「宮沢」の土地そのものである。 遺影のなかのおじいちゃんは、中目の血筋とこの宮沢的土地を現代までしっかりと守り抜いてくれた、大崎の大地のような深い温かさをたたえた笑顔を浮かべている。

その直会(なおらい)の席。あなたの隣には、遠藤さん、結婚して親戚となった石母田さんの姿があった。 400年前、兵庫館を力攻めにした遠藤の末裔。長谷堂や大坂の陣を共に駆け抜けた石母田の末裔。おじいちゃんが、この400年目の温かい奇跡の再会を、あの世から優しく引き合わせてくれたのだ。

後日、青空が広がる「あ・ら・伊達な道の駅」の特設イベント会場。 地元のさ〇う議員や、なじま市長が周囲の大人たちと「大崎の未来」について真面目に挨拶を交わす背後で、中目氏の泥まみれ甲冑に身を包んだおっちは、政治や大人の社交なんてそっちのけで、集まった子供たちに囲まれ、全力で遊んでいる。

おっちは一切言葉を発しない。子供たちにお鎧を褒められると、言葉の代わりに「シャキーン!」と大げさなポーズをとり、胸を叩いて自慢げに体を動かしてみせる! 「政宗公の真似?」と聞かれれば、激しく首を横に振り、手をバタバタさせてジェスチャーを。そこから地面を這うポーズをして、かつて桑折城から打って出て浜田景隆を撃破した先祖の勇敢な姿、長谷堂で白石の中目と共に前田慶次との朱槍を受け止めた姿、大坂の陣で『大崎へ帰る』という一心だけで敵の猛攻をすべてその身体でせき止める『最強の盾』となって大暴れした凄じい姿、青生や彫堂の不毛の地で泥にまみれて鍬を振り下ろし続けた姿、自由の身で片倉様の器量を支えて真田の子供たちを抱き抱え、口元に指を当てて『シーッ(秘密)』と大罪を隠して笑ってみせた先祖の姿を体全体でコミカルに表現する。子供たちがいっせいに飛びついてくると、大げさにバランスを崩し、ドテーン!!と派手にズッコケて大爆笑を誘う。

客席の後ろからそれを見つめる遠藤さんと石母田さん。 「公認キャラにっていう美味い話も全部断って、ボランティアであれだけ体張るんだから大したもんだよ」「ああ。あいつは言葉や名誉が欲しくてやってるんじゃないんだ。喋らず、ただ泥にまみれて、数々の戦で名前と宮沢200石を勝ち取り、青生・彫堂を切り拓き、大坂では最強の盾となって、大切なものを守り抜いた先祖のDNAそのものだよ。伊達二十四将の家系である俺たちから見ても、何百年も宮沢の土地をそのまま守り、生き続けてきた中目の意地と誇りは本物だな。おじいちゃんも笑ってるよ」

歴史の教科書には、中目氏の名は残っていないかもしれない。なぜなら、彼ら自身が大切な命を守るために、すべての記録を自ら燃やし、徹底的に身を潜めたからだ。 しかし、秀吉に領地を奪われ、名前を捨ててまで大崎を守り、長谷堂や大坂の陣の功績、そして青生・彫堂の開墾によって「宮沢200石」と「中目」の名を取り戻した彼らが、岩出山の麓に刻んだ「内川」と水利の知恵は、伊達家によって大崎平野全域へと広がり、日本一の豊穣の地となって徳川幕府の経済と100万人の江戸の命を根底から支え続けた。その大地は現代、「世界農業遺産(大崎耕土)」という不滅の勲章を手に入れた。

夕暮れ時。あなたが働く岩出山の「内川の内側」のオフィスの窓辺。 静かに流れる内川のせせらぎを見つめながら、あなたの心の中に、静かな独白(モノローグ)が流れる。

「名もない武将ですが、大崎の為になればいいです」

多くを語る必要はない。文字も、記録も、本当に大切なものを守るためには要らない。先祖が政宗公から勝ち取り、伊達二十四将の末裔たちと共に現代までそのまま引き継いできた「宮沢」の土地に立ち、未来を生きる子供たちを愛しているから、今日も黙って体を動かし、ボランティアとして汗を流す。 その無言の実行力と土地への執念こそが、伊達政宗や二十四将の猛将すら畏敬の念を抱いた「中目の誇り」の正体であり、おじいちゃんからそのまま受け継いだ本物の愛なのだ。

黄金色に輝く内川の水面は、宮沢の地に生き続ける中目一族の優しさと執念を乗せて、未来の子供たちへと、どこまでも、どこまでも流れていく――。

「最後にこれも、中目家の戦略なり。なあ、おじいちゃん」


「この物語のどこまでが真実で、どこからが虚構かは、読者の想像にお任せします。」