2026年6月16日火曜日

第五章:牙を剥く掌返し、そして見えない首輪 【大崎新生伝 ―数騎の吶喊と、宿命の道化―】

 


伊達・最上軍5,000の大軍勢が大波のように押し寄せ、

大崎の地を荒らしていた反乱軍は瞬く間に粉砕された。

あの絶望的な脱出劇、そして伊達領での果てしない屈辱の日々を経て、

彼らはついに故郷大崎の地を奪還したのである。



中目が馬から飛び降りると、2年間死力を尽くして城を守り抜いた仲間たちが、

涙を流して出迎える。



 そこへ、安全な後方から進軍してきた当主・大崎義直が、

5,000の軍勢を背に、満面の笑みで豪快な高笑いを響かせた。

 静かな冷気が広がる中、義直はふと気づく。

伊達が兵を出した真の条件――

それは、伊達稙宗の息子・小僧丸を大崎家の養子として迎え、

次期当主に据えること。

すなわち、大崎家のお家乗っ取りであった。

あまりに巨大な現実の重さと己の無力さを突きつけられた義直は、

急に自信を失い、みるみるうちに小さくなって震え出した。

小さくなって震える義直の前に、

中目兵庫頭がそっと膝を突く。

 「殿。……大丈夫でございます。大崎は我らが守り抜きました。

伊達のワガママなど、この中目、最初から認める気など

サラサラございませぬ。約束通り・・・」

乱が静まり、約束通り伊達稙宗の息子が、



次期当主「大崎義宣(よしのぶ)」として大崎の地に入ってきた。

遠くから伊達稙宗は冷ややかな微笑を浮かべて観察していた。 (中目よ、今は吠えるがいい。だがその強靭な忠義、いずれは我が伊達家のために使わせてもらうぞ……)

2年間、稙宗は中目という将の「義」を確かだと思い、「いずれ伊達家に引き込もう」と冷徹に計算していた。

最後は、伊達から養子に来た大崎義宣が次期当主として入り込んできたところで、物語は幕を閉じる。

小さくなった主君・義直の手を、中目兵庫頭は壊れそうなほど固く握りしめる。 大崎の意地と、伊達の冷酷な計算が交差する中、中目たちの終わりのない「静かなる戦い」が、ここからまた始まるのだった。



(おわり)

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